昔、顎関節症の原因は「悪いかみ合わせにある」と考えられていました。
しかし現在、世界中の顎関節症の研究者が認めている考え方は、多くの要因(表参照)が寄せ集まり、個々の病因の強さが総じて個人の耐久力を超えることで症状が始まるとする多因子病因説です。かみ合わせの悪さもこの因子の一つですが、それだけの原因で顎関節症が始まることはないというのが研究者間で一致した考えです。
多くの要因の中で、特に重要な要因を2000年に行った患者調査で発見しました。その要因とは『上下歯列接触癖(Tooth Contacting Habit(TCH))』と名付けた”癖”です。本来ならば上下の歯の接触は1日に20分程度ですが、中にはずっと接触させ続けている癖を持つ患者さんがいます。この癖があると筋肉の活動が持続し、関節も押さえつけ続けるために顎関節症を起こします。この癖を持った患者さんは、痛みを持って来院した患者さんの7割に達するという結果を得ました。
また、顎関節症は、現れた症状を放置しても、どんどん悪化するという病気ではありません。一定期間の後に進行が止まり、徐々に機能も改善するという性質があり、とくに軽い一時的な症状は多くの人にしばしば起こります。ただある程度つらい状況が長期間続いたというケースでは、放置しておいて、その後完全に無症状にまで回復するかというと、それは状態によります。
このように顎関節症は、一時的に症状が起こることがありますので1週間は様子を見ましょう。1週間様子を見て改善がなかったり、徐々に悪化してくるなら受診すべきでしょう。
その際には、歯科を受診してください。それは1940年代から顎関節症を多く診てきたのが歯科医であり、研究も歯科医が行ってきたからです。 |